A. 生命を維持する仕組み、すべての化学反応を指します。 ざっくり言うと、代謝とは生物が生きていくための化学反応全般のこと。たとえば植物は、太陽の光と水と二酸化炭素を利用して糖質というエネルギーを自ら生み出す。このエネルギーを作る光合成というプロセスが、すなわち代謝。そして動物は、植物が作り出した糖質をカラダに取り込んで分解し、自らのエネルギーに変換する。植物のように自前でエネルギーを作ることができないので、動物は生きている間じゅう、相当量の食物を食べ続ける宿命。これもまた代謝だ。動物は読んで字のごとしの「動く物」。エサを求めてあちこち動き回るためには膨大なエネルギーが必要なので、複雑な代謝システムを手に入れたと思われる。
★新陳代謝が良いとはどういうことか?
A. 全身の細胞の合成・分解が速やかなこと。歳を取ったなと感じるのはどんなときですか? この質問のよくある答えが、「ケガの治りが遅くなった」というもの。新陳代謝がよかった若い頃は擦り傷なんてあっという間に治ったものだけど、今ではかさぶた痕がなかなか消えない。ここでまた、よく口にするワードが「新陳代謝」。じゃあ新陳代謝って一体何? そう問われて正しく答えられる人は…以下同文。脳や心筋の細胞を除くすべての細胞は、常に合成と分解を繰り返している。髪の毛はどんどん伸びては抜けていき、かさぶた痕もその下から新しい皮膚が成長してきてまっさらなものに入れ替わる。一見、代わり映えしないような筋肉や骨も合成と分解を繰り返していて、筋肉は平均3か月程度、骨は約2年半でリモデリングされる。
★同じ年齢・体格で、平均的な体重の人・太めの人
A. 代謝のひとつ、物質代謝の合成と分解のバランスの違いです。代謝という概念を物質代謝とエネルギー代謝のふたつに分けるという考え方がある。前の項で細胞が常に合成と分解を繰り返していることに触れたが、これが物質代謝に当たる。外から取り入れた食物をエネルギーに変えるのが物質代謝の分解、体脂肪として蓄えるのが物質代謝の合成だ。基本的に、分解すればそこでエネルギーが消費され、合成すればエネルギーは蓄えられる。結果的に起こるエネルギー出納がすなわちエネルギー代謝。このように物質代謝とエネルギー代謝は表裏の関係だ。
A. じっとしていても基礎代謝というエネルギーは消費されます。ヒトも動物の一種なので、あちこち動くためにエネルギーが必要。それなら、じっとしている分には食べ物をせっせと仕入れなくてもいいのでは? そうはいかない。ただ生きているだけでも、エネルギーはしっかり消費されているからだ。寝転がってじっとしているときに消費されるエネルギーのことを基礎代謝という。これが実に1日に消費するエネルギー量の約6割を占める。基礎代謝量は体格に依存するが、仮に1日2000キロカロリーを消費するとして1200キロカロリー、おにぎり約6個分に相当する。
★食事を抜けば食事誘発性熱産生が下がる。
A. 食事の消化吸収でもエネルギーは消費されます。1日の総エネルギー消費量は3つのカテゴリーで構成されている。ひとつはもうご存じの通り、基礎代謝。もうひとつは身体活動量。安静仰臥位からむっくと起きて立ったり歩いたりすると、その分のエネルギー消費量が上乗せされる。これが総エネルギー消費量の約3割。最後のひとつは食事誘発性熱産生(DIT)と呼ばれるカテゴリー。食事を摂ると食物に含まれる栄養素が分解され、そのプロセスでエネルギーが生じる。先ほど勉強した物質代謝の分解によるエネルギー代謝だ。このとき生じたエネルギーのほとんどは熱となって消費される。食事をするとカラダがぽかぽかするのはこのためだ。DITが1日の総エネルギー消費量に占める割合は約10%。たかが10%と侮ってはいけない。DITは食後4時間くらいかけて消費され、思っている以上にエネルギー代謝に上乗せされるからだ。エネルギー消費効率がいい栄養素はタンパク質、次いで糖質、脂質の順番。欠食は論外、代謝の底上げにはタンパク質がマストと心得よう。
★基礎代謝内訳
A. 心臓、腎臓、肝臓、臓器に問題がないのなら筋肉不足が原因かも。じっとしているだけでも、おにぎり6個分のエネルギーが消費されている。では、そのエネルギーは一体どこでどう利用されているのか? 基礎代謝の内訳を見てみよう。1日のエネルギー代謝量が最も多いのは骨格筋、続いて脳、肝臓がトップ3を占めている。でも実は1kg当たりのエネルギー代謝量で見てみると、最も代謝量が高く燃費が悪いのは心臓と腎臓、続いて脳がトップ3となる。考えてみればそれも当然。心臓は1日約10万回拍動して血液を循環させているし、腎臓は1日にドラム缶1本分、約150Lの血液を濾過している。脳は脳で考えたり運動したり全身の情報をフィードバックすることで覚醒時は忙しい。ただ、これらの臓器は重量が少ないので全体で見たときのパーセンテージはそう多くはならない。逆に1kg当たりのエネルギー代謝は少なくても総量が多いのが骨格筋。生まれてこのかたずっと代謝が低いと感じている人、内臓にとくに問題がないのなら筋肉量の不足が原因である可能性大。